1-3『山賊との戦闘』
ダッダッダッ!
猟師「くそっ!剣士の奴なんて無茶を!お前に何かあったら
あいつに顔向けできないだろ…!」
数十分後 山の麓
自衛「彼らの手前言わなかったが、正直どうかしてるぜ…」
同僚「何が?」
自衛「色々さ、街の住人もあの猟師や乗り込んでいった剣士も、
こんな物騒な世界なのに、どうにも危機管理能力に欠ける…」
偵察「それでいて結構無茶をするよな。」
同僚「まぁ、私達の常識はここでは当てにならないし…
それに、人ってそんなもんじゃないか?」
自衛「こんな大惨事が起こってんだ、その一言じゃ片付けられないぜ。」
120車長『ザザ…偵察分隊、聞こえるか?こちら自走120、展開を完了した。
目標の村を射程に捉えてる、いつでも砲撃できるぞ。』
自衛「了解、合図があるまで待機願います。」
隊員E『偵察分隊へ、こちら第一小隊。まもなく山の麓に到着する。』
自衛「了解、状況が切迫しているため、当分隊は先行して攻撃を開始します。」
隊員E『了解、健闘を祈る、交信終了。』
自衛「よし、状況開始。発進しろ。」
ブォォォォォ…
山頂の村
山賊見張りA「へへ、今日はまったくもって大収穫だったな、
笑いが止まらねぇぜ。」
山賊見張りB「それによ、さっき乗り込んできた連中の中に
上玉がいたよな。」
山賊見張りA「ああ、やたら強くてびびったが、捕まえたガキを餌にしたら
あっさり降伏しやがったしな。」
山賊見張りB「へへへ、今夜が楽しみだ、ぐぇ!?」ブシュッ
山賊見張りA「な!?おいどうし、ぎゃっ!?」バシュッ
山賊二人は血を噴出しながら倒れた
猟師「…この下衆共が…捕まってる人達を探さないと…!」
猟師は物陰に隠れながら村内を探す
猟師「!」
山賊見張りC「くっそ面倒臭ぇなあ、捕まえた連中に飯やりなんてよ…」
猟師「…あの小屋か…」
山賊見張りC「どうせ男はいらねぇし、女は上等なの以外売っちまうんだしよぉ…
面ど…むぐ!?が!?」バシュッ
猟師「…よし、死体を隠さないと…」
小屋の中
住民A「…畜生、俺達どうなるんだ…」
住民B「もしかして、みんな殺されちゃうのかな…」
住民C「やめてよ!そんなこと…」
住人D「くそ、意気込んで乗り込んで来たのにこのざまとは…」
雷跡の剣士「………」ジャラ
少女「…おねぇちゃん…」ギュ
雷跡の剣士「おいで、大丈夫だ…くそ、この手枷さえなければ…」
ガチャガチャ…
雷跡の剣士「!?」
ガチャン
住人C「ひっ!?」
住民B「な、何だ!?」
猟師「みんな静かに…大丈夫だ、助けに来た。」
雷跡の剣士「猟師…!?来てくれたのか…!」
猟師「剣士か!?まったく、お前なんて無茶を…!」
雷跡の剣士「すまない…どうしてもじっとしていられなかったんだ…」
猟師「…まあいい、今はここから…」
雷跡の剣士「!、猟師、後ろ!」
猟師「!?」
村の山賊A「オラァ!」
猟師の頭に斧が振り下ろされようとする
猟師「クソッ!」
ドッ
村の山賊A「ゲッ!」
猟師はとっさに山賊の腹に蹴りを叩き込み、
山賊と距離をとった
村の山賊B「いたぞ、侵入者だ!」
村の山賊C「野郎、ぶっ殺せ!」
猟師「囲まれたか!」
村の山賊B「死ねやぁ!」
猟師「せっ、はぁ!」ドスッ
村の山賊B「ぐはっ!?」ブシュ
村の山賊C「この野郎!」
猟師「だっ!」
村の山賊C「ぎゃ!」ザシュ
村の山賊D「くっそ強ぇぞ!」
村の山賊E「調子に乗るな!」
猟師「ッ!?」
雷跡の剣士「猟師!」
ドカッ
村の山賊E「ぎゃぁ!」
猟師「剣士!」
剣士はとび蹴りで猟師に襲い掛かった山賊を倒した
剣士「危なかった…」
猟師「すまない剣士、助かった!」
村の山賊D「この女!手枷をしてあるのに!?」
村の山賊F「やべぇぞこいつら!」
猟師「このまま皆を連れて脱出できるか…」
?「おいおい、景気のいい夜だってのに、さっきから面倒が多くねぇかぁ?」
猟師「!」
村の山賊D「お、お頭!」
村の山賊F「お頭!」
山賊たちが道を空けると、奥から大男が現れた
山賊頭「なんだなんだぁ、さっきの女と…そっちの野郎はなんだ?
まあいい、ずいぶんと派手なことになってるじゃねぇか。」
村の山賊D「しかし、お頭…こいつらなんかやたら強くて…」
山賊頭「まったく、情けねぇ手下共だぜ…俺が相手をしてやるよぉ」
猟師「ッ…クソッ!」ダッ
猟師が山賊頭に飛び掛る
ガキィ!
猟師「な!?」
しかし猟師の短剣は山賊頭の斧で止められた
ガシッ
猟師「がっ!?」
そして山賊頭は片手で猟師の首を掴み、締め上げる
猟師「ぐが…くそ…」
山賊頭「なんだ、大したことねーなー。おら、そっちの女も捕まえろ!」
剣士「猟師!く、やめろ放せ!
」
山賊G「へへへ、さっすがお頭だぜ。」
山賊頭「さーてと、なめた真似をしてくれたなぁ、
さっきの乗り込んできた連中のこともある。
こいつには見せしめになってもらうとしようかぁ?」
猟師「ぐぁぁ…」
剣士「やめろ、猟師ぃ!!」
村の見張り櫓
山賊見張りD「おい見ろよ、お頭がネズミを締め上げてるぜ。」
山賊見張りE「さすがお頭、まったく連中も馬鹿だよな。無駄に逆らわなければ
苦しむこともねぇのによぉ。」
山賊見張りD「まったくだぜ、がはは…おい、なんか聞こえねぇか?」
山賊見張りE「ん?そういえば…」
ブォォォォン!
山賊見張りD「な、なんだ!?」
山賊見張りE「今なんか通り過ぎたよな!?」
山賊見張りD「け、警笛を…」
ドゴォ!
山賊見張りD「うわぁ!なんだ今度は!?」
山賊見張りE「や、櫓に何かがぶつかった!た、倒れるぞ!」
山賊見張りD・E「わぁーーーーー!?」
ドォォォォン!!
山賊見張りD「…ぺっ、い、一体何が…ひっ!?」
山賊の目に、唸りながら自分に向って進んでくるFVが映った
山賊見張りD「ばけも…!た、助け!」
ギュラララララ
山賊見張りD「ギャァァァァァ!!!」
ゴキッ プチッ
山賊頭「な、なんの音だ!?」
音に反応した山賊頭は、猟師を放した
ドサッ
猟師「ゲホッゲホッ!」
村の山賊D「お、お頭、なんか変なモンがこっちに!」
山賊頭「ああ!?」
猟師「あ、あれは…」ゴホ
ダーン!
村の山賊D「ぎゃ!?」ブシュ
山賊頭「うぉぉ!?なんだぁ!?」
自衛「よーし、当たった。」
偵察「猟師達が近くにいるぜ。くそが、これじゃ掃射できねぇな。」
山賊頭「なんなんだぁ、畜生!お前らかかれぇ!」
村の山賊F「へ、へい!」
山賊達「「「うおぉーーーっ!!!」」」
一斉に向ってくる山賊達
偵察「お、こいつはいい!自分達から離れてくれたぜ!」
自衛「いい的だ、やっちまえ!」
ドドドドドドドド!
山賊達「ぎゃぁぁ!?」「うぎゃっ!」「痛ぇ!」
機銃の掃射により山賊達は次々と倒れていく
同僚「左からも来るぞ!」
山賊達B「「「おがぁぁぁ!」」」
自衛「てき弾を使う!」
バシュッ…ドガァーーーーン!!!
山賊達B「「「うぎゃぁぁぁぁぁ!」」」
てき弾の爆発で山賊達はまとめて吹き飛んだ
山賊頭「なんだこのふざけた野郎共は…おい、魔道士!いるか!?」
土の魔道士「およびですか?」シュタッ
山賊頭「やつらをなんとかしろ!お前ならできるだろぉ!?」
土の魔道士「おまかせを。」
同僚「正面!」
自衛「おい、キリがねぇぞ!」ダンダン
偵察「くっそ!再装填…んん?」
自衛「おいどうした!?」
偵察「はずれになんか妙な奴がいるぞ、ほらアレ!」
偵察は奥に見えるローブを被った男を示す
同僚「何だあいつ…他の連中と格好も違うし、何だあの構えは?」
自衛「…!同僚、発進させろ!」
同僚「え?」
自衛「早く!」
自衛は同僚の足の上からアクセルを踏みつけ、
ジープが急発進する
同僚「痛!おま、今日で二回めだ__」
ズォォォォォン!
同僚が言い終える前に、ジープの後ろから衝撃が来た
同僚「!?」
偵察「なんだぁぁ!?」
振り返ると、2mはあろうかという岩の柱が地面に突き刺さっていた
同僚「一体何だこれ!?」
自衛「魔法だ!あのローブの男が魔法を使ったんだ!それ以外考えられねぇ!」
偵察「冗談じゃねぇぞ…おい、上!!!」
ジープの前方直上にまたしても岩の柱が現れる
自衛「ハンドル切れ!」
落下してくる岩の柱をジープは既の所でかわす
偵察「ふざけてやがる!」
同僚「どうするんだこれ!?」
自衛「知るか!とにかく止まるな!出てきた柱を見逃すな!」
土の魔道士「ふふふ、せいぜい逃げ回りなさい。じっくりと追い込んであげますよ。」
ゴゴゴゴゴ…
土の魔道士「ん?何の音ですか?」
グワッシャーーーーン!
土の魔道士「な!?」
FVが体当たりで小屋を破壊して、魔道士の前に現れる
土の魔道士「な、なんですかこいつは!?」
FV車長「なんだこりゃ?自衛、一体どうなってんだ!?」
自衛『FVか!?説明は後だ、ローブの男が見えるか?そいつを仕留めろ!』
FV車長「ローブの男?あれか、わかった!」
土の魔道士「ええい、化け物め!私の魔法で仕留めてくれる!」
岩の柱がFVの直上に現れFV目掛けて落下、直撃する
ゴゥーーーーン!
しかし、岩の柱は鈍い音を立てると、そのまま砕け散った
FV車長「うぉぉ!?なんだこの衝撃は!?」
衛生「何事です!?今の衝撃は!?」
FV車長「わからん!」
土の魔道士「なんだと…!馬鹿な、ええいもう一度!」
再び岩の柱が直撃するも、柱はまたも砕け散った
土の魔道士「そんな!?」
FV車長「うぉぉ…なんとなくわかったぞ!砲手、損害は!?」
FV砲手「大丈夫です、35mm砲に異常無し、システムも正常です!」
FV車長「よーし、発砲しろ!」
ボウボウボウボウ!!!
土の魔道士「馬鹿な…ギャァァァァァ!?」
砲撃を受け、土の魔道士の体はちぎれ飛んだ
FVの後部ハッチが開き、隊員B達が降りてくる
隊員B「残りの奴らを掃討します!」
FV車長「はぁ…自衛、無事か?」
FV車長は車長用ハッチを開け、自衛たちに話しかける
自衛「なんとか…」
FV車長「とんでもねぇな…しかし、今の岩じゃなくて鉄の柱とかだったらやばかったぞ…」
自衛「こっちとしては岩でも十分脅威ですよ…」
猟師「あんたら…来てくれたのか…」
同僚「ここの山賊達は我々としても脅威だったし、放って置くわけにもいかないだろう?」
偵察「それよか無謀すぎんだろお前、人のこと言えねーぞ…」
猟師「すまない…」
雷跡の剣士「猟師…!どうなってるんだ!?この人達は一体…?」
猟師「俺も詳しいことは知らない…だが、今日だけで俺は二度も彼らに助けられた。
命の恩人だよ…」
雷跡の剣士「そうか…」
衛生「士長、誰か怪我は?」
自衛「俺達は大丈夫だ、それより猟師達を頼む。」
衛生「了解。」
グォォォォォォ…
自衛「お、第一小隊が来たな。」
音と共にジープとトラックが一両ずつ、村の中に走りこんできた
隊員E「第一小隊展開しろ、一分隊は建物の無力化、
二分隊、周辺警戒。」
トラックから隊員が降車し、展開してゆく
隊員E「自衛陸士長、状況は?」
自衛「周辺の掃討は完了しましたが、まだ大勢の山賊が残っていると思われます。
それと、向こうの小屋に捕まった街の住民が。保護と退避をお願いします。」
隊員E「わかった。」
隊員B「士長!山賊の内、数人が村の奥に逃げていきました!」
自衛「なにぃ?連中残ってる奴らと合流する気か…」
偵察「おい、そういやあのお頭とか呼ばれてた男もいないぜ!」
自衛「逃げやがったか、追いかけるぞ!
二曹、我々は逃げた敵を追撃します。」
隊員E「わかった、隊員を一組つれていけ。指揮は君に任せる。」
自衛「了解、よし行くぞ!」
バンッ
自衛「…ここにもいねぇか。」
自衛たちは村の家屋を一軒一軒クリアリングしていく。
偵察「こっちももぬけの殻だ。」
自衛「連中、けっこう奥まで逃げてったな…」
隊員D「もしかして、もう山を降りちまったんじゃねぇですかね?」
自衛「ありえない話じゃないが…ッ!隠れろ!」
バシュバシュバシュ!
瞬間、隊員達に向って弓矢が降り注いだ
隊員D「痛ってぇ!?」
同僚「危な!くそっ!」
偵察「弓矢か、どっから!?」
自衛「あそこだ!左前方、民家の屋根!」
隊員D「野郎…ッ!」
隊員Dは腕に刺さった矢を引き抜く
「くたばりやがれ!」
ダダダダダ!
そして山賊達に向けて撃ち放った
山賊弓兵A「ぎゃぁ!」
山賊弓兵B「ぐはっ!」
隊員D「ざまぁみろ!」
偵察「隊員D、まだ来るぞ!身を隠せ!」
別の家屋の屋根にも弓兵が現れる
さらに正面からは十数名の山賊が迫る
自衛「隊員B、隊員D、弓兵に集中しろ!
隊員Fは後ろを警戒、残りは正面に集中砲火だ!」
自衛の指示と同時に一斉射撃が始まる
支援A「蹴散らせ!」
ドドドドド!
村の山賊H「げっ!」
村の山賊I「ぎゃふ!」
自衛「掃射は機銃に任せろ、小銃手はよく狙え!」
隊員B「右の家屋にも弓兵!」ダーン
山賊弓兵C「がっ!?」
隊員D「右奥!次々出てきやがる!」
同僚「正面の勢いが弱まったぞ!」
自衛「こっちも押さないとラチがあかん、前進するぞ!
同僚、偵察、通信、俺と来い!他は支援しろ!」
支援射撃の中、自衛たちは次の遮蔽物へと前進する
隠れた瞬間再び弓矢が降り注いだ
偵察「危ね!寿命が縮まりそうだ!」
自衛「へたすりゃ、即効ゼロになるぞ!」
同僚「奥からさらに来る!」
二十名近い山賊が増援として現れる
村の山賊J「オラァ!」
ドスッ!
偵察「おわっ!?」
山賊が投てきした手斧が偵察の足元に突き刺さった
自衛「手斧だ!気をつけろ!」
偵察「やべぇ!当たれば痛ぇじゃ済まねぇぞ!」
山賊達は戦法を変え、手斧を投げては身を隠す
自衛「そりゃ、いつまでも馬鹿正直に突っ込んではこねぇか…」
同僚「どうする、このままじゃジリ貧だぞ!?」
自衛「待ってろ、てき弾で燻り出す。」
自衛は小銃にてき弾を装着すると、高い角度でそれを構えた
自衛「当たれよ!」バシュッ
高い角度で撃ち出されたてき弾は、やがて弧を描いて落下
物陰の奥に着弾する
村の山賊J「うぎゃぁ!」
村の山賊K「わぁぁ!」
爆発に燻り出された山賊が物陰から逃げ出す
偵察「逃がすか!」ダンダンダン
影から出てきた山賊を撃ち抜いていく
村の山賊L「なんだよあいつら…に、逃げろぉ!」
同僚「見ろ、連中逃げ出して行くぞ!」
偵察「山に逃げ込む気か…」
自衛「逃がすかよ、通信!自走迫撃砲に連絡しろ、連中の退路を断つんだ!」
同僚「待て自衛!もう奴らに戦意はない、何もそこまで!」
自衛「今はな、だが逃がせばそのうち徒党を組み直す。」
同僚「でも…」
自衛「通信、山の裏側を焼き払う。迫撃砲に座標を送れ!」
通信「了解。ソブリンズ、こちらジャンカー2、砲撃支援を要請!
目標座標___」
山頂から5km地点
120通信「__了解、ジャンカー2、これより砲撃支援を開始する。」
120砲手「座標設定終わりました。」
120車長「着弾予定地点は村から距離を離したか?普通科の連中がもらってきた地図は
少し荒いからな。」
120砲手「大丈夫です、少なくとも普通科の連中の頭上には
降り注がないでしょう。」
120車長「よーし、初弾装填しろ!」
120装填手「はっ!」
装填手が120mm砲弾を砲口から装填する
ボシュッ!
次の瞬間には初弾が砲口から飛び出した
120車長「弾着まで5秒…2、1…」
ゼロと同時に山の向こうで爆炎があがる
120砲弾「着弾確認!」
120通信「山頂の部隊より通信。着弾地点の修正要請。」
120車長「少し遠すぎたか…角度3度修正、次弾装填!」
120装填手「次弾装填!」
ボヒュッ!
発射音の数秒後、再び爆炎が上がる
120通信「再度、山頂の部隊より通信。着弾地点は正常、次弾要請。」
120車長「よし、次だ!タラタラすんな!」
村の山賊L「くそっ!畜生!なんなんだあいつら…!?」ザッザッザ
ヒュゥゥゥゥゥゥ…
村の山賊L「あ?何だこの音…」
ボッガァァァァァァァン!
村の山賊L「うぎゃぁぁぁぁ!!熱ぃぃぃぃ___」ジュッ
迫撃砲弾が次々と山の裏側に着弾していく
偵察「爆炎がすげぇな…」
隊員B「山の中から悲鳴が…」
同僚「もう十分だろう、砲撃を中止しろ!
見ろ!逃げなかった奴らも完全に戦意を失ってる、殺さずに捕縛するべきだ!」
同僚は隊員数名を連れ、山賊達の捕縛にかかった
隊員E「自衛士長!今、どうなってる?」
自衛「山賊の退路を断ちました、生き残った者が投降をはじめています。」
隊員E「わかった。第二分隊、確保にかかれ。」
自衛「街の住人は?」
隊員E「それなんだがな、ほとんどはトラックで避難を完了したが…
どうにも女の子が一人いなくなってるらしい。」
自衛「何ですって?」
偵察「おい、それまさか…」
隊員E「それで、男女二人が探しに行くと言ってな。
止めようとしたが、すごい身体能力で飛んで行っちまった…」
同僚「猟師と剣士の二人だ…!」
偵察「しかねぇよな…」
自衛「次から次へと…同僚、隊員B、村の南を捜索しろ!
偵察と通信は俺と北側だ、行け!」
村のはずれ
猟師「くそ!俺達が目を離さなければ!」
雷跡の剣士「少女ちゃん、どこだ!」
猟師と剣士は村の通りを駆け抜けながら少女を探す
猟師「おい、あれは!」
村の山賊M「お、お頭ぁ、一体どうなってんですかぁ…!?」
山賊頭「俺が知るかバカ!なんなんだぁ、あのわけわかんねぇ奴らはぁ…?」
村の山賊N「さっきの爆発も収まったみたいですし、とっととにげましょうぜ…!」
山賊頭「そうだな…お前ら行くぞ!」
猟師「待て!」
山賊頭「ああ?」
村の山賊N「ひ!?お、おまえら!?」
雷跡の剣士「貴様ら、逃がさんぞ!犯した罪は償ってもらう!」
村の山賊N「お、お頭ぁ…」
山賊頭「馬鹿野朗、何びびってやがる!何のために保険をつれてきたと
思ってんだ!」
猟師「何をいっている!さあ、おとなしくするんだ!」
山賊頭「へへ、おとなしくするのはどっちかなぁ?おい、連れて来い!」
猟師「な!」
雷跡の剣士「!?」
少女「お、おねぇちゃん…!」
雷跡の剣士「少女ちゃん!」
山賊頭「変な真似をするなよ、すればどうなるかはわかるよなぁ?」
猟師「くそ、下衆野郎が…!」
隊員B「!、士長、いましたあそこです!」
同僚「あれは!」
隊員B「子供が人質に…?チッ!」ジャキ
同僚「よせ!あの娘に当たったらどうする!?」
隊員B「しかし!」
猟師「放してやれ!その子はまだ子供だぞ!」
山賊頭「だからだよ、派手にやってくれたおかげで俺の山賊団はめちゃくちゃだ。
こいつを売れば建て直しの足しにはなるだろう。
こいつにかせいでもらうって手もあるがなぁ!がはは!」
猟師「貴様ぁ…!」
山賊頭「おおっと動くなよぉ、それと…そこの剣士の女!
お前もこっちに来てもらおうか。」
猟師「!?」
雷跡の剣士「……」
少女「おねぇちゃん…だめ…」
村の山賊M「うるせえ、お前は黙ってろ!」ググ
少女「ぐぅ…!」
雷跡の剣士「わかった!そっちにいく、だからその娘を傷つけるな!」
猟師「な、剣士よせ!奴ら何をするかわからないぞ!」
雷跡の剣士「わかってる、でもこれしかないんだ…」
剣士は剣を捨て、山賊達の元へ歩く
隊員B「士長!発砲許可を!」
同僚「駄目だ!危険すぎる!」
山賊頭「へっへっへ、利口な選択だ。」
山賊N「おらっ!散々面倒かけやがって!」ドコッ
雷跡の剣士「がっ!?」
剣士は拳を食らい、地面に膝をついた
山賊頭「手枷をつけとけ。さて、女も手に入ったし、ここはもう使えねぇし
ずらかるとするか。てめぇはそこで指でも咥えてるんだな、がはは!」
猟師「くそぉ!剣士ぃ!」
バォォォォォォォン!
猟師「!」
唐突に音がしたかと思うと、次の瞬間家屋の影からジープが現れた
隊員B「あれは!」
山賊「あ、あいつはぁ!?」
同僚「自衛!」
自衛「備えろ、フラッシュ弾行くぞ!」
ジープ上の自衛は手を振り上げ、フラッシュ弾を思いっきり投げ放った
猟師「な!」
雷跡の剣士「!?」
山賊頭「バカな!まさか、あいつらこのガキごと…!」
次の瞬間、轟音と閃光が辺りを支配した
山賊頭「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!?」
山賊M「ぎゃぁぁぁ!?」
山賊N「うぎゃぁぁぁ!?」
少女「きゃぁぁ!」
真近で衝撃を受けた、山賊達と少女は大きな悲鳴を上げる
雷跡の剣士「ぐぁぁ…!」
剣士も至近距離で閃光もを受け、その場にうずくまる
猟師「ぐ…なんてことを…!少女ちゃん…!剣士…!」
同僚「落ち着け猟師!大丈夫だ!」
猟師「大丈夫だって!?二人は爆発に巻き込まれたぞ!?」
同僚「落ち着くんだ!今のは音と光だけだ、二人共生きてる!」
錯乱する猟師を同僚は落ち着かせる
猟師「何?」
二人の横をジープが走り抜ける
途中で隊員Fが降り、剣士の安否を確認する
山賊頭「目が…耳が…一体何が…げぶっ!?」
今だ感覚の無い山賊頭を、自衛は銃床で殴りつけた
自衛「野郎!こいつが頭か?」
地面に倒れた山賊頭を偵察と二人がかりで押さえつける
他の山賊も同様に無力化されていく
山賊頭「て…てめえらなにしやが、ぎゃ!」
隊員D「黙ってろ!」
隊員Dが山賊頭の横腹を蹴る
自衛「衛生、その娘と剣士の女を避難させろ、同僚!お前も搬送を手伝え!」
同僚「わかった!」
同僚と衛生は、気絶した少女と足どりのおぼつかない剣士をジープに乗せると、
その場を後にした
入れ替わりにもう一両のジープが滑り込んでくる
乗っているのは隊員Eだ
自衛「二曹、救護対象の搬送を完了、それと敵の親玉らしき男を捕らえました。」
隊員E「了解、この大男か?」
偵察「おそらく。おい、ここの頭はお前なのか?」グイ
山賊頭「そ、そうだ!てめぇらよくもこの俺様に…びゃっ!?」
偵察「余計なことは言わなくていいんだよ。」
偵察は山賊頭の顔面を地面に叩き付ける
隊員E「街を襲撃させたのもお前が命令したのか?」
山賊頭「ああそうさ、食いモンも女も大収穫だったのによぉ!
てめぇらが邪魔さえしなければよぉ!」
自衛「………」
山賊頭「そうだ!見逃してくれれば分け前をやるぜぇ!
食いモンに金目の物、捕まえた奴等の中にはいい女もたくさ、げぇっ!?」ブシュッ
言い終わる前に、山賊頭は奇妙な声を上げ、白目をむいた
山賊頭の後ろ首には鉈が振り下ろされていた
自衛「死んどけ」
振り下ろしたのは自衛だった
山賊頭「ご…こふ…ごひゅ…!」
一振りでは首の骨を貫通できず、山賊頭は苦しそうにもがいている
隊員E「はぁぁ…止めは刺しておけ、第一分隊は生き残りがいないか村の中を調べろ。」
自衛「二曹、見つけたら必ず処理してください。」
隊員E「もちろんだ、分かっている…」
自衛「さて、同僚が戻ってくる前に終えちまわないとな。」
偵察「同僚を行かせたのは、やっぱりそのためか…」
自衛は再び鉈を振り下ろす。
山賊頭「かっ…!?ぎゃ…!?」
何度か振り下ろし、やがて首が落ちて山賊頭は絶命した
山賊M「ひぃぃ!お、おかし、ぎゃ!?」
山賊N「ぎゃぁぁ!?」
残りの山賊達は別の隊員が銃剣で刺し殺してゆく
自衛「…手空きは第一分隊を手伝え。終わり次第、死体を処理し撤収する。」
偵察「とんでもねぇ世界に来ちまったぜ…」
少女「………うん…?」
少年「少女!」
少女「…少年?」
市長「気がついたか!」
少女「お父さん…?あれ、わたし…」
市長「ここは街の診療所だ、お前は助かったんだよ…!」
少年「少女…ごめんよ、僕が…僕が…」
少女「………」ソッ
少年の頬に少女の指が触れる
少年「!」
少女「泣かないで、少年…ありがとう…」
少年「少女…よかった、本当によかった…!」
避難所
市長「本当に、なんとお礼をいっていいか…」
同僚「いえ、あの山賊達は我々にも脅威となり得ました、
我々は自分達の安全を確保したに過ぎません。お礼なら我々より猟師達に。」
市長「それはもちろんです、猟師さんと剣士さんがいなければ、
我々は生きてはいませんでした…」
猟師「よしてください!それを言うなら我々だって、彼らがいなければどうなってたか…」
市長「本来ならなにかお礼を差し上げたいところなんですが…」
隊員E「御気になさらず。それに、助けるべき立場の人々から、物品を巻き上げるなど、
我々の理念に反します。」
偵察「この辺の情報は手に入ったしな。」
市長「とにかく、本当にありがとうございました!」
猟師「俺と剣士は騎士隊の到着までここにいるつもりだ。」
自衛「たのんだぞ、だが無謀なことはするなよ。」
猟師「肝に銘じておくよ。」
市長「それでは、お元気で!」
岐路
FV車長『先頭、FVより各車へ。進路に異常なし、まもなく陣地に到着する。』
自衛「こちらジープ、了解した。」
同僚「よかったな、あの街が助かって。」
自衛「あの街はな…」
同僚「…含みのある言い方だな?」
自衛「どうやら俺達はかなり物騒な世界に飛ばされてきちまったらしい…
それだけならまだしも、近代兵器で暴れまわった。」
偵察「結構な奴らが俺達を目撃しただろうな。」
自衛「この世界がどれ程の広さかは、まだ今一掴めんが…、
俺達は今後、高確率で面倒事に巻き込まれるぞ。」
同僚「………」
野戦テント内
一曹「確かにな…この世界の世界観からすれば、我々は目立ちすぎる。」
二尉「だが、行動しないわけにはいかないだろ?」
隊員A「食料が容易に確保できないとなると、より遠くに足を延ばす必要があります。
それも早急に。」
自衛「それはわかってる。俺が言いたいのは、
状況に対する見方を改めて欲しい、ということです。」
一曹「つまり?」
自衛「"ためらわずに撃て"これを今後、全隊員に徹底させて下さい。
ここは安全な日本じゃありません、躊躇が残るようであれば、遠からず隊員から死人がでます。」
二尉「………」
隊員A「………」
同僚「………」
一曹「やはりそうなるか…わかった、所属問わず全ての隊員に通達する。
武装の確認と、再編成も実施もする必要があるな。」
二尉「整備隊の連中にも、武装するよう言っておかないとな。」
自衛「お願いします。」
同僚「…では、私から今後の補給についてなんですが…」
一曹「何かめどはたったか?」
同僚「先程、隊員A三曹が言われたとおり、あの町での補給が望めなくなった以上、
足を延ばさざるを得ません。これを…」
同僚は机に地図を広げる
同僚「その場合、補給が望めそうな比較的近い街はここから二箇所。
一つはここから東に向かい、連峰を越え、さらに進んだ所にある街。
かなり大きな街のようなので補給が期待できますが、
山と国境を越えなければなりません。」
一曹「ハイリスク、ハイリターンか…」
同僚「もう一つはここから北西に進んだ所にある街。
この街は、先程の山賊に襲われた街が救援を求めに使者を送った街です。
規模は中程度ですが、地図上では障害らしき物は確認できません。
何より街は騎士団の常駐地にもなっているそうなので、
治安の高さが期待できます。」
一曹「成程…安全性を考えるなら後者だな。君としてはどう考える?」
同僚「私も最初はそう考えましたが、状況に余裕があるとは言えません。
ここは思い切って、両方に部隊を向けるべきかと思います。」
二尉「両方か、それもアリなんじゃないか。で、部隊編成はどうする?
どうせなら山側はヘリで向うか?」
同僚「いえ、山といっても馬車での往来ができるそうなので、
連峰方面には装甲車を送りたいと。
それに、何かあった時に緊急展開できるのはヘリコプターだけです。
申し訳ありませんが待機をお願いします。」
二尉「そらそうか。」
一曹「もう一方は軽車両だけで大丈夫そうか?」
同僚「はい、ただ念のため重火器を装備したほうが良いかと。」
一曹「分かった。三曹、補給二曹を呼んでくれ。編成と装備を相談をしたい。」
隊員A「わかりました。」
一曹「頼む、自衛と同僚は今日はもう休んでくれ。」
同僚「はぁ…疲れたな…」
自衛「ありえねぇ一日だったぜ…」
同僚「もう辺りが暗くなり始めてる…」
FV車長「おろ、お前らもう報告は終わったのか?」
同僚「あ、ええ。」
自衛「三曹こそなんです?その両手の水いっぱいのバケツは?」
FV車長「FVを洗ってやってるんだよ、今日一日で相当数の死体を轢いたからな…」
同僚「ああ、そういえば…」
FV砲手「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
言いかけた途端、FVの方向から悲鳴が聞こえてきた
自衛「なんだ!?」
FV車長「あれは砲手の声だ!」
FV車長が走り出し、自衛と同僚もそれに続く
FV車長「どうした!」
FV砲手「あ、あ、あれ!あ、あし、あ…!」
自衛「足だぁ?」
FV車長「落ち着け、砲手。足がどうした?」
FV操縦手「あー…、これですよ…」
FV操縦手がFVのキャタピラの奥から何かを取り出す
同僚「何が…う!」
自衛「…人間の足か?」
FV砲手「う、うぇぇ!」ダッ
FV砲手は口を押さえてその場から走り去った
FV車長「まぁ、無理もねぇか…」
自衛「誰の足だろうな…市民か山賊か?」
FV操縦手「ぐっちゃぐちゃで検討もつかねぇよ…」
同僚「それより、どうするんだそれ?」
FV車長「陣地の外にでも埋めとくしかあるまい。」
FV操縦手「ですよね…埋めてきます」
FV車長「一応拝んどけよ…」
同僚「飯食う前で良かった…」
自衛「…?フロントに岩が、そういやFVにはあの岩の柱が直撃してたよな…」
同僚「え、ああそうだな。」
FV車長「ああ、車体に特に影響はなかったが、あれは結構な衝撃だったぞ。
岩だったから良かったようなものを…」
自衛「今後は、岩以外の物を相手にすることもあるかもな。」
同僚「おい、また不安を煽るような事を…」
自衛「十分にありうる話だ、現に俺達が最初に遭遇した魔法は、
勇者達一行の炎の魔法だったろ?」
同僚「…確かに…」
自衛「ここが俺達が想像してるような世界なら、さらに強力な魔法を使う連中が
出てきても全く不思議は無い。」
FV車長「でも、実際出てきたとしてどう対処するんだ?
魔法なんてわけの分からんもん、どうしようもないぞ?」
自衛「今後の探索で、何か使える物を見つけられれば…」
同僚「…そんな簡単にみつかるような物か?」
自衛「確証はない、だがなんとかしなけりゃ最悪全員あの世行きだ。
ここが俺達の考えてるような世界だとしたら、近代火器の力も
いつまでも当てにはできない。」
同僚「………」
FV車長「暗い話はよそう、ただでさえみんな不安な上に疲れてるんだ。
休める時に休んどけよ。」
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